外債運用に関する山崎元氏への反論

ダイヤモンド・オンラインに連載中の「山崎元のマネー経済の歩き方」の記事「運用商品の選択は本来単純だ」で、個人の資産運用で外国債券を組み入れるメリットは乏しいとの指摘がある。
山崎氏の指摘は以下の通り:

個人の場合、かなり多額(ざっと10億円以上)の運用資産がないと外国債券部分で有効な分散投資を行なうことが難しい。信用リスクの分析が難しいことや、売り買い共に市場価格と証券会社が提示する価格とのあいだにかなりの差ができること(つまり中抜きされる)も障害になる。個人の場合、為替ヘッジのオペレーションは面倒だろうから、外国株式でも為替リスクを取ることを考えると、資産分類として外国債券を組み入れるメリットは乏しい。


しかし、この指摘には以下のような疑問が沸いてくる。

1. 厳密に言えば10億以上というのも理解できなくもないが、そもそもシティ国債インデックスと同じような通貨配分は米ドル、ユーロ、英ポンドでほぼ完成できるし、株式と違って債券価格の変動はそれほど上下はないので、デュレーションも各通貨で短期(外貨MMF)、中期(5年〜10年程度)、長期(10年以上)の3種類くらいそろえれば、数十万円で完成できる。山崎氏は昔から「株式は3銘柄から分散ででOK」と言っているが、なぜ株式よりも変動の小さい債券でこのような発言をするのか理解できない。

2. 信用リスクの分析が難しいというが、それはハイイールド債やエマージング債の話で、シティ国債インデックスにこのような特殊な債券は含まれない。

3. 中抜き手数料は証券会社によって異なるが、米国10年債の場合は、片道0.2%程度で、他の金融商品と比較して突出して高いとは思えない。

4. そもそも個人の長期投資で為替ヘッジは必要ない。為替リスクをとることについても、外国株式と外国債券の値動きは若干異なるわけだから、相関は存在する。資産全体のなかで相関を考えれば良い話である。

関連記事:
・外債インデックスファンド・ボンドセレクトトラスト・ゼロクーポン債の比較

コメント
株式が下がると債券が上がるので、組み入れた方がよりよいでしょうが、今回みたいにドル安になってしまうと、外債も円換算するとさすがに目減りしていますので、債券の価格変動よりも為替変動の方が大きいということですかね?

4分散投資はよくされる方法ですが、国内債券については現在あまりメリットがないと考えている人が多いですね。外国債券についても債券価格としてではなく為替変動の方が大きいのが現状かなと思います。
全資産のうち、何割を株式クラスにするか、また何割を為替リスクにさらすかを決めて、為替リスクの調整に外債を組み入れたり、FXで為替ヘッジしたりする発想ですかね。
山崎氏の想定為替リスクはやや低め。外国株式の想定割合はやや多めということでしょうかね。
  • 債券価格変動については軽視なんでしょうねぇ。
  • 2008/03/20 12:00 PM
金融資産が5億以上の人は、外債運用は米英独国債を使ってラダー型でパッシブに流してる人結構いるよね。小額な金融資産の人は、投信会社に手数料払ってまでやる必要無し、と言いたいんじゃないでしょうか。
  • ゆかしいFP 
  • 2008/03/21 11:56 AM
自身のブログでは、コストが低い外債投信にはある程度の理解は示しているようです。(コメントの質問に対して回答しています。)

http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/cmt/146148a9b977152b9f7b9f712bf34919
  • jasper
  • 2008/03/21 9:43 PM
(A)外債ETFを利用すれば、低コストで外債投資ができます。外国株ETFを利用するように、外債ETFを利用すればいいのでは。


(B)山崎氏の考えだと、為替変動が激しい国に住む投資家は外債投資ができそうにありません。そういうリクツはおかしいと思います。
そもそも、ローカル通貨建てでリターン・リスクを計算するのが間違いでは? 実質実効為替レートや主要国通貨バスケットで測りなおしてからリターンとリスクを計算したほうがいいのでは?

余裕資金で投資している以上、ローカル通貨を元にしてリスク・リターンを計るのはおかしいと思います。
  • 便所の落書きの精
  • 2008/03/22 1:27 PM
外債のリスク要因を分解してみると、1985年から2002年と少々古いデータで恐縮だが世界国債ベースで見ると、為替割合約7割、債券割合3割となっている様だ。
また同時期の世界国債を円に対し為替フリーとヘッジを比較すると、リターンは両方6%程度だが、リスクはフリー10%、ヘッジ6%程度である。

最近出た大和証券のレポートでは、直近一年の円ドルレートと日経平均の回帰分析の結果が出ている。
それによるとY=272.44X-15147.29 決定係数0.94である。一円円高になると270円日経平均が下がる。

外債部分で無理に為替リスクをとるといい事ないよ。 
  • ゆかしいFP
  • 2008/03/25 2:08 PM
>為替フリーとヘッジを比較すると、リターンは両方6%程度

ヘッジの有無にかかわらず同程度のリターンというのは興味深いですね。金利平価ということで理屈上の可能性はありそうなのですが、それを裏付けるような過去データがあるのかと。それで、この期間の国内債券のリターンもやはり6%程度なのでしょうか?
  • ntk
  • 2008/03/25 6:08 PM
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