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300年の国債の歴史から今後の財政破綻の可能性を探る



18年度の一般会計予算財務省原案が発表された。小渕政権が大盤振る舞いをして以来、8年ぶりに80兆円を下回り、総額は79兆6860億円。新規国債発行額も29兆9730億円で、5年ぶりに30兆円を下回った。
新規国債発行額を30兆円以下にすることは、小泉政権の公約だったが、小泉政権最後の年にしてようやく達成することができそうだ。懸念されていた財政破綻が、少し遠のいたかのように見えるが、実際はどうなのだろうか?

現在、政府には800兆円の債務があり(地方自治体にも約200兆円の債務があり合わせて1000兆円以上と言われている)、この債務は年々増え続けている。政府は毎年約30兆円の新規国債を発行しているが、返済している額は20兆円弱で、そのうち約半分が利子返済分である。政府は2010年代初頭に、歳出を借り入れ以外の歳入でまかなうこと(プライマリーバランスの均衡)を目標にしているが、果たしてこの目標はどのくらい大変なことなのだろうか?

まずは、金利の上昇が起きないと仮定して話を進めよう。例えば5年後の2010年にプライマリーバランスを達成するためには、新規発行を毎年2兆円づつ減らしていけば、5年後に20兆円となり、だいたい目標達成することが可能だ。毎年3%づつ予算を削減していけばよいので一見簡単そうに見える。

ところが、金利が上昇した場合には大変なことになる。現在短期債から長期債まで、すべての債務の金利を平均するとだいたい1%程度で、800兆円のうちの1%なので、上記のように毎年の返済額が10兆円程度になるのである。ところが、この金利が2%程度になると毎年の返済額は20兆円になり、3%程度になると、30兆円になり(7〜8年程度かかるが)、新規発行しても利子しか返せないという状況に陥るのである。

しかも、少子高齢化で税収は長期的に減少し、社会保障費は上昇する。消費税は1%上げると2兆円の税収があるといわれているが、その分、消費も減退させるので、消費税を上げても、景気を減退させ所得税や法人税による税収を減らす可能性がある。

金利上昇の可能性についても考えてみよう。金利はお金の需要と供給のバランスによって決まる。つまり、お金を借りたい人よりも貸したい人のほうが多ければ金利は低下し、貸したい人よりも借りたい人のほうが多ければ金利は上昇する。

これまでは、金融システムが不安定で、不況が長引いていたために、日本銀行がお金をどんどん発行し、借りたい人以上にお金の量を流通させてきた。ところが、景気が回復し始め、土地などの資産価格が上昇してくる中で、市場にお金をたくさん流通させたままだと、バブルが発生してしまう(現在の株式市場はそのような様相を呈しているが)。そこで、日本銀行はお金の流通量を減らす必要に迫られているわけだ。これが量的緩和政策の終了と短期金利の上昇という形で、国債の金利にも影響する可能性が高くなっている。

さらに郵政民営化による影響も大きい。郵便貯金はすでにピークの250兆円から50兆円ほど減少しており、さらに減少することが避けられない。郵貯の半分以上は国債で運用されており、郵貯の減少は、国債の売り圧力が強くなることを意味する。郵貯から逃げ出したお金の一部は個人の国債投資に回っているが、郵貯による国債売りが金利に与える影響は決して侮れない。

こうして考えると、プライマリーバランスの確保というのは、かなり大変なことであることがわかる。しかも、プライマリーバランスを達成しても、それはゴールではなく、借金を減らすためのスタートラインにしかならない。私は、むやみに財政破綻を煽るのは好きではないが、財政破綻が、高い可能性でありうることは確かであろう。

なお、財政破綻のリスクについてはさまざまな本が発行されているが、論理の飛躍が見られたり、資産運用アドバイスや海外のオフショアファンドを販売する目的で書かれたものも多い。したがって、事実に基づいた冷静な論理展開がなされている本を読むのがオススメである。一冊あげるとすれば、国債と金利をめぐる300年史だろうか。

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・地方自治体の財政破綻予備軍ランキング

コメント
 TBありがとうございます。
 記事を拝見させていただきましたが、財政破綻を阻止しても破綻しても国民が災を被るという感覚はぬぐえません。
 報道されているように、もう人口は減少に向かっているんですよね。「これが決定打だ!」とか「増税反対!」とか安直な意見ばかり重ねている場合じゃない。まずは財政破綻を阻止すべく納税で何世代にまたいでの超長期的な借金返済を目指すと共に、破綻に備えてお金の運用を精査した方が良いですね。例えば日本の国債を買っている法人にお金を託さないということとか。郵貯は危ないってことは分かりました。
TBありがとうございます。日本に住んで働いている以上国債の問題から逃れることはできません。とても金利が上がったうれしいなんてとてもいえません。増税も怖いけど悪性インフレはもっと怖い。イチローや青色ダイオードの中村教授みたいに海外で仕事ができる人がうらやましいです。
始めまして。

景気の回復で税収も増え、国債の発行量も二年連続で減少。一応、最悪の状態からは脱したように感じますが、それでも莫大な借金が消えたわけではなく、まだ日本財政はレッドゾーンに入ったままです。増税無しで財政再建するのは至難の業。1%上げれば2兆円税収が増えるという消費税が財政再建の鍵を握るでしょう。(つーか先ずデフレを・・・)

もし仮に財政破綻した場合、円の下落により物価が上昇。石油危機のような混乱も有り得るのではないでしょうか?流石に、一部の破綻本著者が言うような「途上国転落」「物価が100倍」といった事態は考えにくいのですが・・・
  • ラディン
  • 2005/12/29 2:38 AM
ラディンさん。コメントありがとう。

貿易黒字が続いているうちは「途上国転落」「物価が100倍」といった事態は考えにくいですね。

そういう意味では、団塊世代が抜けた後の技術力の伝承がカギになると思います。
  • Yuki
  • 2005/12/29 9:30 AM
これ2005年の話なんですね。
今2010年ですけど破綻しませんね
  • tomkun
  • 2010/12/03 4:19 PM
2010年までに破綻するとは一言も書いていませんが・・・
  • ゆうき
  • 2010/12/03 4:25 PM
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来年度予算の財務省原案が閣議に提出されました。 就任時の公約である国債30兆円以下を初めて実現したことが一番の目玉のようですが、 なんかすっきりしないのは僕だけでしょうか? いろいろと理由はあります。
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