「内藤忍の資産設計塾・実践編」への疑問



内藤忍の資産設計塾・実践編が発売されたので、早速購入して読んでみた。前作の内藤忍の資産設計塾と内容はほとんど変わらないので、前作を読んだ人はあえて購入する必要はないかなと思う。
ただ、全体的には前作よりも構成がスムーズに流れているので、前作を読んでいない人にはおすすめだ。このサイトでも何度も強調しているアセットアロケーションの入門本としては最適だと思う。ただ、前作を読んでの感想、内藤忍の資産設計塾の問題点、にも書いた点は引き続き残っている。今回は、新たに沸いてきた疑問を書いてみることにしよう。

そもそもアセットアロケーションは、まずリスク許容度を設定し、各資産(例えば国内株式、国内債券、外国株式、外国債券)の過去のリスク(標準偏差で表す)から、各資産の相関関係に基づいて、期待リターンが最大化するように各資産の割合を決めていく(詳しくはアセットアロケーションの基本を参照)。もちろん、いくら計算上の期待リターンが最大化するとはいっても、標準偏差や相関関数の誤差も考えて、あまり極端な配分にせず、ある程度ファジーに分散することが必要であろう。

ところが、内藤忍氏は、「厳密なアセットアロケーションの考え方では、すべてのアセットクラスのリスクと期待リターンから最適な配分比率が計算されることになりますが、実際にこれを行うには多くの問題があります」と断っていて、結局「日本株式の割合>外国株式の割合」「外国株式1:外国債券1」という制約を設けて、この配分内で割合を決めることを薦めている。確かに、最適な配分比率を計算をするのはなかなか難しいが、基本的な考え方さえ理解できれば、特別な計算をしなくてもグラフのカーブからある程度の推定値を出すことはできる(詳しくは道具としてのファイナンスを参照)。この点を説明しないで、難しいから置いておくのはいかがなものかと思う。では、この二つの制約条件の問題点について考えてみよう。

まず、日本株式を外国株式の割合よりも多くする事に関しては、「日本株式が外国株式に比べて異なった動きをすることはあまりない」「日本国内で生活している限り日本株式の動きに生活に大きな影響を発生する」というのが主な理由のようだ。しかし、貿易構造上、外国株の動きに日本株が影響されることはあっても、日本株の動きで、外国株が動くというのはほとんどないのが現状である。また、株価が生活に影響されるという説明は、現状の日本人の金融資産における株式の割合の低さを考えれば、どのように影響を受けるのか説明がつかないし、逆に不況時に雇用が不安定になるのであれば、金融資産は日本の景気とは逆の動きをしていたほうが、生活上のリスクを回避することにはならないだろうか?

また、外国株式と外国債券の比率を1:1にすることに関しては、まったく説明がない。これは、先ほど説明したリスク許容度や、その中での日本株式との相関関係によって、外国株式と外国債券の割合は大きく変わってくる。ちなみに、日本株に対してもっとも逆の動きをするのは外国債券なので、同じリスク許容度において、期待リターンを高めようと思えば、一般的に、外国株式よりも外国債券の比率を高める必要がある。このように、わかりやすさを考慮した結果、本質が微妙に隠れたカタチとなってしまっている。物事の本質は、つねに「わかりにくさ」「難しさ」の中にあるものだ。

加えて、具体的なアドバイスがマネックス証券の商品ラインナップに縛られているのも気になる。例えば、外国債券部分は外貨MMFと外債と外国為替証拠金(FX)取引しか紹介していないが、外貨MMFやFX取引は短期債なので長期投資では金利の面で不利だ。本来であれば、外債インデックスファンドのほうが汎用性が高いのだが、マネックス証券で取り扱っていないものは掲載したくないのであろう。

関連記事:
・マネックス資産設計ファンドは買いか?

コメント
トラバありがとうございます。内藤さんの最新本は
まだ読んでいません。参考になります。ありがとうございます。
内藤さんの前回の本を読んでアセットアロケーションに関して
なるほどと思いながらも、ちょっともやもやっとした気になる
ことがあって、うまく説明ができませんが、
新しい本でもまた疑問が湧きそうな感じかな・・・(笑)
TBありがとうございます。
おそらくTBは二回目?

内藤氏の資産設計塾は、基本的なことを押さえておくのに重要なポイントだと思っています。
「アセットアロケーションでリターンの8割が決まる。」
これは証券仲介業をやり、多くの顧客の資産管理をしていてまさに真実だと感じていますね。

TBありがとうございます。
内藤氏の新しい本は注文したばかりですが、前作とさほど変わらないようなので、ちょっと無駄なことをしたかなと思います。コンセプトは前作同様なのでしょうから、いくら手直ししたとしても、それほど違いのあるものを出せるとは思いません。
TBありがとうございます!

この本は、さらっと立ち読みしただけで購入しませんでした。
資産配分をよく知らない人にはオススメかと思います。
私も「具体的なアドバイスがマネックス証券の商品ラインナップに縛られているのも気になる。」に同感です。

TBありがとうございました☆

今はまだまだ勉強初期段階なので、これからのためにこのサイトは参考になります。
TBさせていただきました。はじめまして、先物タローって言います。先物取引ばかりしていましたが、最近アセットアロケーションの重要性を知り、色々勉強して実際に運用してみることにしました。のんびり増やせたらいいなぁって思ってます。
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