「内藤忍の資産設計塾」の問題点〜外貨資産を持たないことは「リスク」か?



「内藤忍の資産設計塾」は基本的には、アセットアロケーションを考える上で重要な情報が多く掲載されている良い本である。ただ、以下の3点は問題かと思う。
1. 外貨資産を持たないことがリスクだとしている点。まず投資用語としてのリスクとリターンの使い方が間違っている。わかりやすく言うと、リスクは「結果のばらつき」であり標準偏差で測るもの、リターンは「平均的に予想される利益」である。本書では、資産運用は購買力で考えるべきで、外貨資産を持たないことはインフレに対するリスクだろ言っているが、そもそも、リスクを計算するときに購買力価格を基準にはしないので、このような用語の使い方は間違っている。

2. 円安のときに、日々の生活における輸入物価が高騰するので、外貨を持つことで、このリスクを回避することができる、としているが、日本の場合、輸入はGDPの10%以下で、これは主要国の中で最も低い割合である。仮に、輸入品の価格が30%増加したとしても、経済全体で平均した物価上昇率は、3%程度にしかならず、その中で国産品で代替されたり、企業努力などで吸収されるので、実際は1〜2%しか上昇しないと言われている(詳しくは、吉本佳生著「金融広告を読め」)。したがって、外貨資産を持つ理由として、購買力の維持という考え方は論理的ではない。

3. 一定の期間おきに同じ商品を同額購入し続ける「ドルコスト平均法」が、結果的に購入価格を下げるとしている。しかし、ドルコスト平均法はある期間における平均価格で購入したのと同様であり、その期間においては、その平均価格よりも価格が高い期間と低い期間は、同じだけ存在するため、ドルコスト平均法が結果的に購入価格を下げる割合は50:50である(詳しくは、山崎元「お金を増やす本当の常識」)。ただ、株価投資の場合、ある程度上昇した段階で、マネー雑誌などが騒ぎ出すため、一般投資家が投資をしようと思うタイミングには、すでに平均価格より高い可能性が往々にしてあり、そういった投資家心理を逆手に取れば、ドルコスト平均法が、個人投資家にとって結果的に有利になる可能性はある。

関連記事:
・「内藤忍の資産設計塾・実践編」の問題点

コメント
初めまして
トラックバックありがとうございます
内藤氏の本の内容を別の視点から考察していらっしゃり
大変為になりました
これからもよろしくおねがいいたします
トラックバックありがとうございます.
内藤氏の本は読んでいませんが,吉本氏と山崎氏の本は中立な内容で参考になりますよね.
こちらのサイトも充実した内容ですね.
いろいろと参考にさせていただきます.
はじめまして。ググって到達しました。
もうこんな前に、既にシノビーの妙な話に対するコメントが出ていたなんて、今更気づきました。お恥ずかしいながら。

同じく3.ドルコストや2.円安リスクの話、様々なパラメータの値が悪い方向に向かった際の話で、そうならないことのほうが多いとぼんやり感じていたので、ここのコメントに共感を覚えました。

また1.の購買力が期待利益に対するどのような変動リスクに関係するのか理解しがたいものがあり、また購買力というパラメータをリスクレート算出に使ったことがないので、どういうことかなと思ったあたりも妙に共感した部分です。
  • ツノビー
  • 2007/02/18 11:12 PM
このページはとてもためになりますね。
私が考えていたのとほぼ同じ事がまとめて書いてあり、とても共感できました。

1つ御指摘させていただきます。

「ドルコスト平均法はある期間における平均価格で購入したのと同様」
というのは正しいとも言えるし、間違っているとも言えると思います。

例えば、
-----------------------------------------

1$=120円±5円で3回に分けて3万円を$に替える場合と、
1$=120円で直接3万円を$に替える場合を比較してみましょう。

前者は(10000/115)+(10000/120)+(10000/125)=250.29
後者は
30000/120=250.00

ほんのわずかですが、理論上は日本円の平均価格で購入するより有利になります。

----------------------------------------
ただし、平均価格をUS$を基準に計算すると、

1$=120円±5円で3回に分けて3万円を$に替える場合と、
1$=3/(1/115+1/120+1/125)=119.86円で直接3万円を$に替える場合を比較してみましょう。

前者は(10000/115)+(10000/120)+(10000/125)=250.29
後者は
30000/119.86=250.29

となり両者は一致します。

----------------------------------------

上記のように、これがUS$等であれば、日本円から計算した平均価格とは一致せず、US$から計算した平均価格と一致するという事です。
どちらの視点で見るかで結果が変わってきます。

これが投信の累投になりますと、
投信から見た平均価格ではなく
日本円から計算した平均価格で計算しますので、計算上はドルコストがほんのわずかに有利という結論に達します。

とてもややこしいですね。
ご参考までに。

ただし私もドルコストの効果についてはあまり期待しておりません。理論の検証程度にお考え下さい。
  • ほげほげ
  • 2007/08/16 10:09 AM
ほげほげさん

ドルコスト平均法については本ブログでかなり議論しましたので、以下の記事&コメントもご覧いただければと思います。

http://fund.jugem.jp/?eid=221

http://fund.jugem.jp/?eid=226

http://fund.jugem.jp/?eid=227
  • ゆうき
  • 2007/08/17 5:11 PM
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  • マネー・ユニバーシティ
  • 2005/11/02 1:42 AM

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