自治体破綻法制化の進展



現在、地方債は、形の上では各自治体の発行となっているものの、政府資金の充当や交付税による確保によって「暗黙の政府保証」がついている。夕張市のように財政破綻しても「財政再建団体」として国が面倒を見るのが現状だ。だから市場での地方債の価格は、自治体の財政状況によって若干の差はあるものの、それほど大きくはなかった。しかし、この政府保証を完全撤廃し、地方債を完全自由化しようという動きが進行している。
竹中前総務大臣の私的諮問機関である「地方分権21世紀ビジョン懇談会」の報告書(2006年7月)によれば、2008年の公営企業金融公庫廃止後には、地方債への政府保証の付与を完全撤廃し、2016年までに地方債の完全自由化を実現することを提言している。この提言に基づいて、8月末に地方債の発行方式が自主発行方式に改定された。ところが、総務省の方針転換が急すぎたため、予定通り発行できない自治体が続出してしまった。

また、この懇談会の報告書は2009年までに地方自治体の破綻法制を整備することも提言している。この提言に基づいて、8月末に破綻法制を研究する「新しい地方財政再生制度研究会」がスタートした。

地方債が完全自由化されれば、今まで「国債の利率+少々の上乗せ金利」で発行できた地方債の金利が軒並み上昇していく。財政危機に直面している自治体の破綻を早めることになるだろう。多額の地方債を押し付けられている地銀も連鎖倒産が起こる。さらに、これまでは、郵貯・簡保から自治体への低利貸し出し、公営企業金融公庫からの低利融資があったが、2008年度以降は、そういった低利融資も期待できなくなる。

地方債の発行額は1990年ごろまでは70兆円程度で安定していたものの、この15年で200兆円にまで達した。政府内で検討されている「地方債の自由化」「自治体破綻法制の整備」は、この負担に耐え切れなくなった国が、地方を切り捨てるためのステップなのだろう(地方債がなぜ急増したかは内橋克人著「悪魔のサイクル」に詳しい)。

私は上記のような状況から、地方債を買うのはおすすめしない(もちろん国債も)。しかし、この問題は、単に自分が地方債を買わないから済むというような話でもないだろう。自治体が高金利で資金調達しても、公平な教育や医療などの公共サービスは行えない。したがって、地方債の完全自由化は望ましくない。これには一定の歯止めが必要だ。

関連記事:
・自治体財政破綻時代へ
・地方自治体の財政破綻予備軍ランキング

コメント
うーん、むしろまともなリスク評価に耐えられないのに「金融市場」から資金を調達しようとすることが根本的におかしいので、そういう仕組みを維持しようとすれば市場の歪みを拡大させてしまいマイナス要因になると思います。
むしろ債券以外の資金調達手段を考えた方が…とはいっても他には増税くらいしかないのかなぁ
  • アルビレオ
  • 2006/10/16 1:36 AM
以前、証券会社から、大阪府の地方債の勧誘を受けましたが、利率に全くプレミアムの無い状態でした。
財務内容から見て、通常の起債なら利率を上げるべきと、購入を見送ったことがあります。
いまごろ、市場原理を導入した考え方をすること自体、遅すぎます。
いつまでも、親方日の丸では、行けるほど甘くは無いことに、気付かないほうが、どうかしていると思います。
金利上昇で、資金調達できなければ、デフォルトか、政府に肩代わりするしかないですが、どうせ政府の肩代わりで、血税投入でしょう。
この国は、やはり半社会主義ではないかと思います。
  • sifer
  • 2006/10/17 7:48 PM
日本人はなぜ『社会主義/共産主義』VS『資本主義/自由主義』という単純な二極化でしかかんがえられないのであろうか? 

資本主義にだって社会主義的な資本主義、つまりは社民主義が存在するわけだし、社会主義もファビアン主義のような改革路線もあるのである。 

経済的尺度においての左右分布図↓

無政府共産主義(大きな政府を通り越した万物共有社会)>

大きな政府:
新マルクス主義(新共産主義)>マルクス・レーニン主義(ソ連型共産主義)>シンディカリズム(労働組合中心の共産主義)
>ファビアン社会主義(労働組合中心の改革化社会主義)
>社民主義(ケインジアン左派)>修正資本主義(ケインジアン右派)

>自由放任資本主義(マネタリズム、おそらく現代社会において一番小さな政府、これ以上右に行くと逆説的に大きな政府になる)

<小泉構造改革(中途半端な政府のサイズ)

<法人資本主義(レーガノミックス、ここら辺から政府が逆説的に大きくなっている、例)法人支援など)

<法人支配主義(右派:ブッシュJr&ムッソリーニ、左派:シンガポール、現代中国)
:小さな政府を通り越した法人企業が制御する大きな政府


なおヒットラーは社会的尺度にて史上に存在したいかなる思想よりも極右であったが、経済的尺度にてはリベラルであった。 ヒトラーエコノミーはケインズ左派に当たる。

余談だが『小林よしのり』も経済尺度ではかなりリベラルでありファビアン社会主義の部類である。

  • okyou
  • 2006/10/18 8:14 AM
アメリカの大投資家、ジョージ・ソロスは
アメリカ市場原理主義を批判しています
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478200807/sr=8-6/qid=1161158625/ref=sr_1_6/250-7616145-0116205?ie=UTF8&s=books
  • uu
  • 2006/10/18 5:05 PM
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 皆さん、こんにちは。木村剛です。「ris」さんから、地方債に関するトラックバッ
  • 週刊!木村剛 powered by ココログ
  • 2006/10/19 9:04 AM
『横浜市債は、国債と同じ信用力!』 横浜市が10月4日に出した記者発表資料には上の文字がでかでかと踊っていました。
  • 為替王
  • 2006/10/20 3:05 PM

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