外債インデックスファンド・ボンドセレクトトラスト・ゼロクーポン債の比較

読者の方から「外債投資をするときに、外債インデックスファンド、ボンドセレクトトラスト、ゼロクーポン債のどれにすれば良いのか悩んでいる。どうすればよいか?」という質問を頂いた。まずは、各商品の特徴とコストを追ってみよう。
2013/12/28追記:ゼロクーポン債・ボンドセレクトトラスト等に対する税制は2016年に改正され、節税策は使用できなくなります。詳しくは2016年(平成28年)から投資税制一本化〜外貨MMFやゼロクーポン債の節税策を封鎖を参照。

■外債インデックスファンド
通貨・債券の種類:米国債約3割、ユーロ建て国債約6割、その他の先進国債約1割
債券の平均残存年数:約6年
最低購入金額:1万円
購入時の手数料:無手数料〜約1%
維持コスト:年間0.7%程度
税金:分配金に20%の分離課税(通常、分配は年1回)
参考記事:
・外国株・債券インデックスファンド徹底比較〜外債インデックスを売りたがらない販売窓口
・国内最安外債インデックスファンド「PRUマーケット・パフォーマー」

■ボンドセレクトトラスト
通貨・債券の種類:米ドル、豪ドル、ポンド、NZドル、ユーロ、加ドル、から選択可能、短期社債が中心
債券の平均残存年数:1年未満
最低購入金額:1000円程度から(通貨によって異なる)
購入時の手数料:為替手数料のみ。通常の証券会社では、米ドル建ての場合は往復1円(購入代金の1%程度)だが、NZドルなどは2%近くになる。
維持コスト:ネット上の記載なし。以前目論見書を見たことがあるが、忘れてしまった。誰か手元に目論見書を持っている方がいたら教えてほしい(追記:信託報酬は0.76%程度とのことです。詳しくはコメント欄参照)。
税金:分配なし。公募外国公社債投信なので売却益は非課税。したがって、実質的には、非課税。
参考記事:
・外貨MMFよりも税制上有利なボンドセレクトトラストとシティカレンシー

■ゼロクーポン債
通貨・債券の種類:米国債、カナダ国債、フランス国債など
債券の平均残存年数:1年程度から20年以上のものまで、流通量の多い米国債であれば種類が豊富。
最低購入金額:10万円程度から
購入時の手数料:為替手数料と売買手数料。通常の証券会社では、米ドル建ての場合は往復1円(購入代金の1%程度)だが、ポンドやNZドルなどは2%近くになる。売買手数料は売買価格に含まれており、これは証券会社によって異なるが、米国10年債の場合は、0.2%程度。
維持コスト:外国証券口座維持手数料がかかる。証券会社によって異なるが、年間2000円から3000円程度。
税金:償還時の売却益に対して雑所得。途中売却の場合は譲渡所得。
参考記事:
・ゼロクーポン債投資による節税法
・債券投資の基本

さて、気になる選択のポイントだが、ポイントは「コスト」「利子」「通貨」の3つだと思う。

1. コストについて

外債インデックスファンドやボンドセレクトトラストは小額からでも購入できるが、ゼロクーポン債は最低購入金額が10万円程度からとちょっと高くなる。外債インデックスファンドの維持コストが年0.7%であることを考えれば、最低でも最初に50万円くらい投資しないと割が合わない。利子が上昇しているときには、借り換えが頻繁に行われている外債インデックスファンドの方が一時的に有利な場合があるが、基本的には50万円以上であればゼロクーポン債を購入した方が有利だ。

2. 金利について

通常は、長期の債券の方が短期の債券よりも利子が高い。ところが、現在のように通貨当局が利上げを行っている時や、多くの債券投資家が「今後は利子が下がるのではないか」と思って取引しているときには、長期の利子と短期の利子が同じくらい、もしくは逆転してしまうことがある。これをイールドカーブのフラット化という。

現在のようにフラット化している場合は、短期のボンドセレクトトラストと長期の外債インデックスファンドやゼロクーポン債の利回りはほとんど変わらない。しかし、長期的に考えれば、長期債の方が短期債よりも利子は高くなるので、10年以上の長期で投資しようと思っている方には、ボンドセレクトトラストはあまりオススメしない。

3. 通貨について

投資のリスクを下げるためには通貨の分散が必要である。外債インデックスファンドは、米ドル、ユーロ、ポンドとある程度分散されているが、ボンドセレクトトラストとゼロクーポン債は、複数の通貨を選択することになる。一般的にはドルとユーロが中心になるだろう。特に、NZドルや豪ドルなど、流通量の少ない通貨に投資をするときは、通貨そのものの変動が激しいので注意が必要だ。

関連記事:
・資産運用ノウハウのまとめ

コメント
はじめまして。
トラバありがとうございます。
ボンドセレクトトラストの維持コストは、ざくっと0.2%ぐらいだったと思います。私も目論見書が手元にありません。。。
BST の維持コスト (目論見書 2005.10 を参照)
-----
管理報酬   :0.01%
投資顧問報酬 :0.075〜0.150%
保管報酬   :0.10%
代行協会員報酬:0.0〜0.50%以下
-----
資産量で報酬が決まるようですが、あまり多くの資金が集まっていないようなので年率 0.76% 程度の費用が必要になると考えて良さそうです。ちなみにノムラ外貨 MMF の場合、0.65%+α 程度。利回りを比較すると、0.1% の差が分かります。

BST の場合、短期金利政策に連動するので米ドル辺りは2〜3年後には利下げが進んでいるかもしれません。どの道、長期向きでは無さそうです。後、BST の信託期間は 2013.12.31 までらしいので形式上、後、7 年あまりの運用になります。延長を期待しています。

外貨インデックスの場合も同様かと思いますが、長期債券を多く扱っている関係上、BST よりは影響は少ないかと思われます。

後、豪ドルは地政学リスクが少ないという利点があるかも。
  • Mc.N
  • 2006/10/02 10:22 PM
Mc.Nさん

情報提供ありがとうございます。さっそく記事に追記させていただきました。
  • ゆうき
  • 2006/10/02 10:55 PM
たいへん参考になりました。
代行協会員報酬:0.0〜0.50%以下
というのを計算に入れてなかったようです。

でもよく考えたら、Mc.Nさんがいわれるように、外貨MMFとBSTの利回りの差をみればわかりますね。

結局、ファンドでなくて現物の債券を買ったほうが運用コストは安いですね、ある程度の資金が必要ですが。

またよろしくお願いします。

ところで、BSTの場合、現時点ではキャピタルゲインに課税されないと聞きましたがほんとうなのでしょうか?
Mc.Nさん、ありがとうございます。

BSTはなかなか魅力的ですね。しいていえば、運用コストですが、いくら以上ならば現物債券(ゼロクーポン)を持っていた方がいいのか計算してみます。
(まだブログ立ち上げたばかりで、名前も二転三転しております。現時点では、スープでいこうかなと思っています。)

スープ
ゆうきさん、コメントを頂いた皆さん
私の初歩的な質問に対し、丁寧に解説して頂きありがとうございます。
ゼロクーポン債を地域分散で取得しようと思います。
後は世界銀行債なども良いかもしれませんね
これからもこのサイトを参考に勉強を続けたいです
  • mi-corazon
  • 2006/10/08 3:14 AM
このサイトはこれから投資をまじめに考える者にとって、非常にありがたいサイトですね。
ところで、外貨立てのゼロクーポン債などの満期時にちょうど円高になってしまっていた場合は、そのまま外貨でもちつづけ円安になるのを待って為替差益も得たい場合、証券会社の口座に外貨のままおいておけるのでしょうか? それとも外貨で預金できる銀行口座をあらかじめ作っておいて、そちらへ移動させればよいのでしょうか?
  • kame.40
  • 2006/10/14 4:41 AM
kame.40さん

ありがとうございます。

ネット証券だと償還時・売却時に強制的に円にされてしまうところもあるみたいですが、一般の大手証券会社では外貨MMFのまま持つことが可能です。

外債を購入するのであれば、野村、大和、日興あたりの大手の方が品揃えも多いので、よいと思います。
  • ゆうき
  • 2006/10/14 9:11 AM
コメントありがとうございます。たいへん参考になりました。
おすすめの書籍なども読み、シミュレーションなどもしてみたいと思います。
余談ですが、金融関係の売り手側は、結局マージンはどれだけ取って、最終的な実質の利回り数値はどれだけになるのか説明できない、または説明したがらない人が多くて困っていたところでした。私には投資は無理かなと自信をなくしかけていたところ、少し前向きになれました。
  • kame.40
  • 2006/10/14 2:01 PM
2点ほど確認させてください

- 外債インデックスファンドの課税について
外債インデックスファンドは100%債券で運用していたとしても扱いは「株式投資信託」だったはずです。少なくとも中央三井の外債インデックスの目論見書にはそのような記載がありました。よって源泉分離課税ではなく配当所得に当たるのではないでしょうか。つまり現在(08.03.31まで)なら分配金に対する課税は 10% であるはずです。

-ポンドの手数料は 2%?
現在 1 ポンド=222円程度なので往復 2 円として考えても手数料は 1 %程度と考えた方が宜しいのではないでしょうか。1NZドルの方は異論ありません。
  • Mc.N
  • 2006/11/05 10:11 PM
Mc.Nさん

ご指摘ありがとうございます。さっそく両方とも修正しました。今後ともよろしくお願いします。
  • ゆうき
  • 2006/11/06 9:21 PM
はじめまして。
ボンドセレクトトラスト(BST)で検索したらここに行き着きました。
大変有用なHPで勉強になります。
1つ教えていただきたいのですが、BSTに為替ヘッジを掛けておけば
元本とそれなりの利回り(通常の7-8割?)が円建てで確保できるのでは
ないでしょうか?良く為替ヘッジありの投信を見かけますが、このタイプではなぜないのでしょう?勿論、円安時は儲け損ないますが。
よろしくご教授下さい。
  • 初心者
  • 2006/11/08 2:24 AM
理論的に為替ヘッジにはそれぞれの通貨の短期金利差分のヘッジコストがかかります。
それでも一般的な債券型ファンドだと長期と短期の金利差による利益が生まれますが、短期中心のBSTでは社債などのリスクプレミアムもわずかなのでほとんど相殺されて、100%ヘッジすると円MMFの利回りを上回ることは難しいでしょう。(円がゼロ金利だとマイナスになる可能性も高い)
だから為替ヘッジつきのBSTを作るくらいなら、円建てのBSTの方が仕組みがシンプルな分だけコスト的に有利だと思います。
  • アルビレオ
  • 2006/11/08 3:48 AM
アルビレオ様
詳細な解説ありがとうございました。
初心者ついでにこんな皮算用をたててみましたがどうでしょうか?
10000米ドルをBSTで購入(1ドル120円、金利4,5%、120万円と仮定)、同時に20万円をeワラントの米ドルプットに投入。1ドル100円で40万、140円でゼロになる程度のレバのかかった商品を選ぶ(多分あるでしょう)。これで1ドル100-140円の範囲で為替リスクは消滅し、利息が丸々残る計算です。実質3.85%位(ドルベース)です。
手数料や税金は考慮していません。あと、為替変動とワラント価格が必ずしも相関するとは限りませんし、為替変動がないとワラントの方が目減りする恐れもありますが、これでかなり為替リスクは軽減されてませんか?
  • 2006/11/08 7:35 AM
初心者さん

そもそも為替ヘッジは、将来のある時点で一定の元本を確保することを要求される機関投資家のためのものであって、そのような要件のない個人投資家が掛けるべきものでもないと思います。あなたが一年後にこのおカネを使う可能性が高いのであれば、検討の余地はありますが、長期的に考えているのであれば、将来にわたる為替ヘッジコストは膨大になります。
  • ゆうき
  • 2006/11/08 8:37 AM
御返事ありがとうございました。
最大限工夫すれば円建てでももう少しマシな利回りで回らないものか(勿論元本確保で)と考えてみた次第です。
今夏に出た東京三菱の劣後債(2.38%で4年)を持っていますが、国内で安心度が高いとすればこの辺が限界でしょうか。
  • 初心者
  • 2006/11/08 12:27 PM
初心者さん

4年の円建て債券で2.38%はお買い得だと思います。これ以上の元本確保型商品だと、かなりあやしいものになってくると思います。
  • ゆうき
  • 2006/11/08 12:59 PM
ありがとうございました。
国内金利が予想に反して上がらなかったら繰り上げ償還するという
特約がついていますが、いい商品だと思いました。
  • 初心者
  • 2006/11/08 2:02 PM
いちおう話は落ち着いたようですが念のため。

>20万円をeワラントの米ドルプットに投入。
>1ドル100円で40万、140円でゼロになる程度のレバのかかった商品を選ぶ

こんなものは存在しませんね。
仮に3日後に満期となる権利行使価格140円のドルプットオプションを考えてみましょう。
3日後だとものすごく円安になってもせいぜい120円くらいでしょうから、オプションの価格は確実に20円以上になります。
つまりオプションというのは現実の相場とかけ離れるほど、レバレッジが小さくなる性質を持っているわけです。
さらに満期までの残存期間が長いほど金利差の影響などでオプションの価格は高くなるため、1万ドルの長期プットオプションを「140円/ドルでゼロになる」ように購入するには20万円ではどう考えても無理です。
さらにそういった取引として成立しにくいオプションは流動性が低すぎるのでeワラントでは扱っていないはず。

初心者さんのアイディアを実現するなら、為替証拠金で1万ドルの売りポジションを持つのが一番コストのかからないヘッジ方法だと思います。
保有期間にもよりますが、20万円あれば135円くらいまでは持ちこたえられるでしょう。
ただしこれでもBSTからの利益はドル売りのスワップコストでほとんど相殺されます。

結局「高金利通貨をヘッジすれば金利差分のヘッジコストがかかり、通貨による高金利のメリットは失われる」というルールから逃れることはできません。
  • アルビレオ
  • 2006/11/08 2:57 PM
教えてください。20年後を想定し、どの通貨のどの商品が
適当か、具体的にお願いします。
  • 2007/02/24 9:19 PM
上記の相談者の方へ

私がそれを知っていたら、今頃大金持ちになっていますよ。外債インデックス、もしくは外債インデックスと同じ割合で外債直接購入、というのが無難な選択肢だとは思いますが・・・
  • ゆうき
  • 2007/02/24 9:34 PM
有難うございました。また勉強させてください。
  • 2007/02/24 9:37 PM
 初めて拝見させて頂きまして、とても参考になります。
今後、いろいろ参考にさせて頂きたい思います。

私は、今後の年金代わりに、約10年後償還の米国債ゼロクーポンを毎年額面1万ドルごと買い(約6年分ぐらい)途中解約をして、それを外貨MMFにもどしてまた買う事を繰りかえして、今後の年金生活に充てようと考えています。
ちなみに、老後は30年後ぐらいですが。

一気に30年後の債権を買うよりは為替レートのリスクは高いと言えば高いですが。
ネットで買えるようになった、日興で買おうと思いますが。売却は店頭のみだそうですが。

どうでしょうか?
本当は大和か三菱なんかでネットでやってくれるといいのですが。
いまいち、踏み切れませんがどうでしょうか?
  • さいさい
  • 2007/09/02 9:49 PM
ゼロクーポン債投資自体は良いと思いますが、海外債券のみで資産運用するのはリスクが高いですよ。バランスが重要です。
  • ゆうき
  • 2007/09/04 11:08 AM
 有難うございました。
個人国債(日本)物なども考えたいと思います。
南アフリカドルのゼロクーポン債も発見したので
キタル老後の為に色々考えていきたいと思います。
参考にさせて頂きます。
  • さいさい
  • 2007/09/07 6:43 PM
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