山崎元の新刊「投資バカにつける薬」を読んだ。山崎氏の著書は、「山崎元のオトナのマネー運用塾」、「お金を増やす本当の常識」と読んできたが、基本的な主張はほとんど変わらない。ただ、「投資バカにつける薬」では、いくつか新しい分析方法も試みていて、この3冊の中では、一番良い本だと思った。
本書の内容を要約すると以下の通り:
非常にロジカルで明快な主張に好感が持てる一冊だ。
関連記事:
・山崎元「新しい株式投資論〜合理的へそ曲がりのすすめ」
- すべての運用商品はマーケットでの収益を売り手と買い手で分かち合う構造。したがって売り手の儲けは買い手の損になる。
- 長期投資はリスクそのものが減少するわけではない。長期投資の有利な点はコストが減少することだ。
- ほとんどの投資信託は手数料が高すぎる。これは投資信託の販売窓口を長らく証券会社が独占したことに起因する。
- チャート分析には科学的根拠がない。チャート分析は、売買を誘発して手数料を儲けたい証券会社の戦略で、初心者にチャート分析を薦めるのは有害だ。
- 生命保険の手数料(付加保険料)は不透明で暴利だ。大量の営業部隊を抱える旧来の生命保険ビジネスモデルは明らかに限界に達している。
- 投資信託において、過去のパフォーマンスと将来のパフォーマンスには相関がない。これまで成績が良いファンドでも、これからもよいとは言えない。
- 3銘柄以上の個別銘柄の株式投資(コストが安く透明性も高い)と個人向け国債への投資を推奨。
- 日経平均やTOPIXに連動するETFやパッシブファンドは、銘柄入れ替えで確実に損をする。
- 投資用マンションにおける不動産会社の粗利は30%とかなり高い。REITも透明性が低く、必ずしも優良物件のみが入っているとは考えにくい。
- 毎月分配型ファンドは投資家の心理をうまくついた商品だが、毎月分配金から税金を差し引かれるため、年一回決算のファンドに比べ不利である。
- ドルコスト平均法では平均購入価格は低下しない。購入価格が平均化されるだけで、一括購入に比べて有利な確率は半々でしかない。
- 成功報酬型のファンドはハイリスクな運用をすればするほどファンドマネージャーが儲かるしくみ。
- ファンド・オブ・ファンズを買うのは手数料の二重払い。不合理極まりないコストの塊だ。
- 為替リスクは投資のリスクではなく、ゼロサムの投機のリスク。外貨預金にハイリスク・ハイリターンの原則は適用できない。
- 金への投資は、維持コストばかりかかって何の収益も生み出さない。
- 手数料が高く、法律も制度も異なる海外のプライベートバンクに預けるのは圧倒的にデメリットが大きい。
非常にロジカルで明快な主張に好感が持てる一冊だ。
関連記事:
・山崎元「新しい株式投資論〜合理的へそ曲がりのすすめ」
- 2006.05.25 Thursday
- カテゴリ:資産運用全般
- comments(13)
僕も山崎氏のファンで『週間ダイヤモンド』の連載をいつも楽しみにしています。
本書は特に,営業職員がこう言ってきたらこのように切り返してやれっていうアドバイス付きだったのが痛快でしたね。読みやすくまとまりもあって,非常によくできた本だなあと思いました。